熊と狩人
ここは小さな納屋の中だ。
たくさんの薪が積まれており、古い木の臭いがせまい空間に充満している。
窓から夕焼けの光がうっすらとさしこんでいた。その光に照らされた床の中心に、大きな鉄格子の檻が置かれていた。
檻の中には、血まみれの熊が横たわっていた。
全身に銃弾を撃ちこまれたまま、半日ほど放置されているのだ。口のまわりや体毛に、乾いた血がこびりついていた。
「殺せ」
もう一度つぶやいて、熊は檻の外をにらみつけた。
そこでは、ひとりの狩人が、椅子に座っていた。三十歳くらいの大柄な男だ。彼は無表情で、ひざにのせた猟銃に弾をこめていた。
どうや、熊を撃ったのは、この男のようだ。
熊は、いらついたようにうなったあと、頭をあげて叫んだ。
「早く殺せよ」
「殺すさ」狩人は立ちあがった。「その前に、もう一度聞いておくぞ。今朝、あんたはなんで、あんなことをしたんだ?」