熊と狩人
熊は一瞬ひるんだ顔をしたが、すぐにまた憎悪に満ちた目つきで狩人をにらみつけた。
「おまえにおれを責める権利があるのか?」
狩人は眉間にしわをよせた。
「そうだな。そのとおりだ」つぶやきながら、猟銃をかまえる。「でも、おれはあんたを許すことはできない」
銃口を熊に向けた。引き金に指をかける。
「一発でやってくれよ」
そう言って熊は目をとじた。
十秒ほどの間があった。
狩人は、引き金をひくことができなかった。
「ちくしょう」
狩人は、檻の鉄格子を思いきり蹴った。派手な音がひびきわたり、埃が舞う。
熊は目をひらいて、ため息をついた。
「またか」
「くそ、なんでこんなことになっちまったんだ。おれと、あんたが、なんで」
狩人は頭をかかえて、押し殺したうめき声をあげた。
熊は、何も答えなかった。