熊と狩人
「てめえ」
他の狼達が牙をむいた。
狩人は半身を起こし、ナイフをかまえて笑った。
「そう簡単に食われてたまるか」
「立つことすらできないくせに、いきがってんじゃねえよ」
狼達は、うなり声をあげて、飛びかかる態勢をとった。狩人は目つきを鋭くして、ナイフを持つ手に力をこめた。
そのとき、大きな黒い影か、狩人と狼達を覆った。
「何やってんだ」
背後から、低く重たい声がした。すると、狼達の目に怯えが走った。
ふりかえると、一匹の熊が、木々の間に立って、こちらを見下ろしていた。
「おれの縄張りで獲物をとるなと、あれほど言っただろう」熊は、威圧的な表情で言った。「失せろ」
狼達は、くやしそうな顔をしながら、おとなしくその場から去っていった。
熊は狩人と目をあわせた。
「あんたもさっさとこの森から出るんだな」
狩人は苦笑した。
「そうしたいのは、やまやまなんだけどな、腹が減って動けないんだよ」
「迷ったのか?」
「ああ、まったく情けないよ」
熊は何かを考えるようなしぐさを見せたあと、ちょっと待ってろと言って姿を消した。
そして少ししてから、一匹の大きな魚を口にくわえてもどってきた。