熊と狩人
「食え」
熊は狩人の目の前に、その魚を落とした。魚は土をはじきながら、元気よくはねた。
狩人は、ぼうぜんとそれを見つめた。
「なんで?」
「いいから、さっさと食え」
熊はぶっきらぼうにつぶやいた。
狩人は、目に涙をうかべて、熊にむかって頭をさげた。そして魚をナイフで簡単にさばき、ゆっくりと、よく噛みながら、それを食べた。食べ終わったあと、狩人はもう一度ていねいに頭をさげた。
「あっちにむかって、まっすぐに歩けば川に出る。その川をたどって下流へ進めば、半日で人里に着く」
熊はその方向をあごでさしながら言うと、尻をむけて歩み去った。
狩人は、言われたとおりに進んで、無事に森から出ることができた。