愛しいカタチの抱きしめかた


「恋とは――どんなものなんだろうね」


作業を順調に進めながら、唐突に間宮くんは訊ねてきた。


「えっ、それわたしに質問してるの?」


「勿論。日紫喜以外にここに人はいない」


「頭いいから自分で考えれば?」


「頭がいいぶん頭でっかちなものでね」


「……さっきから、ちょこちょこ貶してくるよね。やっぱり恨みあるんじゃないの?」


「ないさ。答えてくれたら、作業効率の上がるコツを教えてあげるよ」


そんな方法があるんだったら最初から実行してほしい。頭のいい人は、他人をおちょくりながらほくそ笑むのがきっと好きなんだ。


早くこの場を収拾させたかったから、昨日観たドラマの内容を思い出す。


「一瞬で落ちるものもあるんじゃないの?」


そんな台詞を主人公が言っていた。まあ、一概には言えないけど、長くは語りたくない。


「ああ。――そうか」


老齢の紳士が、生涯の謎を解明したような顔をされた。


「早く効率アップしてよ。間宮くん」


「それはね、日紫喜もボクも、一心不乱になるだけのことさ」


「……」

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