愛しいカタチの抱きしめかた
「みーちゃんっ……、帰ろう」
勢いよく開けられた扉の震える音だけがしばらく響いた。
「――ああ。百瀬か」
それでも間宮くんは離れてくれない。
百瀬が乱暴な足どり近づいてきて、わたしを囲んでいた間宮くんの腕を払いのけようとした。
「く……っ」
「どうしたんたい? 百瀬。力が全く入っていないじゃないか」
払いのけられなかった百瀬を間宮くんが見下ろす。
「間宮……もう仕事は終わったみたいだから、用はないだろう?」
「――、そうだね。これ以上は嫌われそうだからやめておくつもりだったし」
わたしにでも分かる、相手を苛立たせる皮肉な笑みを浮かべ、ようやく間宮くんは全体像を確認できる距離へと離れてくれた。
「日紫喜、また明日」
「あっ……」
「みーちゃん、行くよ」
わたしは、百瀬に回収されるように教室を後にした。