愛しいカタチの抱きしめかた


慌てて布団に潜りこんだわたしをよそに、小夜と大輔は朝の遅刻の言い合いをしていた。


「もうっ。大輔はいつも遅れてくる。少しは幹二くんを見習いなさいよ。ノックだって、幹二くんならもっと配慮あるわ」


「うるせー。だったら、朝は別でいいじゃんかよ。なんか風習みたいになってっけど」


「大輔のおばさんにも頼まれてるの。玄関まで迎えに行かないことを感謝してほしいものだわ。それに、みのりが寂しがるから言わないの」


「……」


ベッドの中で息が漏れなかったことに感謝をする。


そっと覗くと、大輔までもが納得してしまっていて。


「まあ、いいけどよ。田舎道はおっかないもんな」


「……大輔は、ひとりで登校がいいの?」


気になって弾けた質問に、大輔からミカンがひと房飛んできた。


「アホなことばっか言ってんな。うちのミカン食って正気に戻れ。それなあ、幹二に持ってったのに突き返されたし追い返されたんだぞ。――みのり、幹二に何かしただろ。反省しろ」


飛んできたミカンはそのあと口に押し込まれ、甘い甘い味が口中に広がった。

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