愛しいカタチの抱きしめかた
「とりあえず、みのりは幹二くん対応と、進路調査表の提出をしなくっちゃね。先生から伝言よ」
「……もぅ。こんな皆大好きな気持ち最高潮のときに言われたら、わたし、小夜と一緒の進路がいいとしか思えない」
「あら、それ私も嬉しいわ。どうしよう。怒れないじゃない」
じゃれ始めてしまった小夜とわたしを眺め、大輔の溜め息が聞こえた気がした。
「じゃあ、オレもう帰るからな」
来たとき同様乱雑な音を立てて帰り支度をする大輔に、慌ててお礼をした。
「だっ、大輔!ありがとうっ」
こんな改まったのなんて、もういつ振りだったろう。お互いに恥ずかしかったのか、大輔はそそくさと帰っていった。わたしも、挙げた手が行き場をなくして少しの間放浪してしまった。
空が夕方の気配を醸し始めるまで、わたしは小夜に百瀬とのことを初めて相談した。細かなところはまだ恥ずかしくて言えなかったけど。間宮くんのことも告白すると、人生のモテ期だと小夜が笑う。
相談事なんて、その場で解決に至ることはそうないと思う。踏み出す勇気を出せるかどうかが、実は鍵だと思う。
「ありがと、小夜。元気出た」
「うん。なら良かった」
しばらくの間、少しだけ甘酸っぱい内容の会話を続けた。少し照れるねと、二人で顔を熱くした。
―――――――――――――――――――――
2ー4・ピーターパンシンドローム
―――――――――――――――――――――