愛しいカタチの抱きしめかた
「――、間宮くん」
「頭痛薬を貰いにね。何処にあるか知ってるかい?」
「先生……」
「いないよ」
言葉は遮られて、暫く沈黙が続いた。
おかしな感じだった。いつも巧みにわたしをおちょくりながら不敵に笑う間宮くんが、今日は下がった眉のまま。カーテンを少しだけ開けてわたしを見下ろす様子は、誰かに似ている――?
「――似てる、ね」
それは思わず口をついて出てしまった。
突拍子もないわたしの態度に、間宮くんの表情が若干普通になる。
「とは、誰になんだい?」
「洋助さんに」
告げると、何故か間宮くんは不服そうで。
「ふぅん。そう」
少し前のことが、今はやけに懐かしく。
「不思議――あの時は、わたし、洋助さんにもっと上から見下ろされてて、洋助さんだって、今の間宮くんとは違って微笑んでたのに。でも、似てるって感じた。まあ、お身内なんだから当然だよね」
地上へと繋がる丸い穴の底にいたわたしは、そこで洋助さんの切ない愛情を聞いた。教えてくれたのは、百瀬。
「あの時、ぼくも日紫喜を……」
「え、何?」
「……いや、聞こえていないのならいい」
口先だけで呟く間宮くんの言葉は、わたしにまでは届かなかった。