愛しいカタチの抱きしめかた
「そんなことより、日紫喜」
「っ、あっ、ごめん。頭痛薬だったよね。先生しか出せないとこにあると思うんだ。わたしが持ってるので良ければ渡せるけど」
常備薬として持っているそれは、常時携帯義務のある生徒手帳に忍ばせてある。けれど、取り出そうとしたところ断られた。
間宮くんが、カーテンをするりと抜けてベッドの傍らへと一歩踏み出す。
わたしは、それを硬直して見上げた。
「――何も。これ以上は今日は近付かないよ」
「あっ……別に、そんなことじゃ」
「ただ、心配だっただけだ。日紫喜のことが。朝のことも、この前の放課後のことも」
「間宮くん……朝の見てたんだ」
「気付かれていないのは傷つくね。ガラにもなく授業をサボって来てしまったのも道化だ」
「……」
「傷」
「うん。平気だよ」
「ボクが魔法使いだったなら、そんな傷、触れて、一瞬で治してあげられるのにな」
間宮くんはわたしの左の首筋の方に手のひらを伸ばして、触れようとしないまま、そう言った。
初めて耳にしたキャラの間宮くんは、けれど、とてもしっくりときていて。
「――ありがとう。気持ちだけで充分。この痛みは、ちゃんと持っていたいものだから、その言葉が一番いい」