愛しいカタチの抱きしめかた

/1ー1・日常に、プラス

―――――――――――――――――――――
1ー1・日常に、プラス
―――――――――――――――――――――



わたしたちが通う高校は、田んぼが広がる風景の真ん中にある。


とても田舎だけど、住宅地の方も大差ないと思う。


人口、少なめ。減少はしていない。


進学先の枝分かれも豊富じゃないから、段階的に学校の規模は大きくなってはいくけど、顔ぶれはあまり変わらずだ。こちらの中学とあちらの中学を足しましたよ、というかんじ。




わたし、日紫喜みのりの周囲も例に漏れず。


仲がいいのは、小学校からの付き合いの、小夜と大輔。三歳から一緒の、百瀬幹二。


わたしや小夜、大輔をはじめ、この地域は日紫喜姓が多い。読みづらいらしい姓は、他の土地へ住むと『ひじき』とあだ名をつけられることが多いみたい。なんて単純なんだろう。


なんとなく、別段意識もせず、その姓で誰かを呼んでしまうと、目的の人物以外も振り返るから、その名字の人間は下の名前で呼ばれることがほとんどだ。


だからわたしは、百瀬幹二のことは『百瀬』と呼ぶ。なんだか新鮮だし、響きもいいから気に入ってる。




他はそれなり。


広く浅く、仲のいい子はそれなりにいて、日々の暮らしは順風満帆とはいかないまでも、心地よいものだと思う。


ちょうどいいくらいのわたしのキャパで、そんな日常は穏やかに過ぎていく。

< 2 / 181 >

この作品をシェア

pagetop