愛しいカタチの抱きしめかた


なんとなく、わたしは調子が狂ってしまって言葉が出ない。


百瀬は、探し物の存在を忘れてしまったかのように、わたしを見下ろしたまま、しばらく動かなかった。


この周囲の時間だけが、時計の針よりも、とてもゆっくり過ぎているように感じた――……。







その時、外界からの干渉により、わたしたちの世界はようやく元に戻った。


「どうかしたのかい?」


穴の外。多分、誰かが気づいてくれて、声をかけてくれたんだと思う。百瀬が、誰かに手を貸してもらえるよう頼んでいることをなんとなく感じた。


やがて、百瀬が見下ろす。


「みーちゃんもう大丈夫だから。あと少しの辛抱だよ。助けてくれるって」


「うん。ありがとう」


そして、


「――お嬢さん」


百瀬じゃない、もうひとりの誰かの声がした。





「少し待っていておくれ。誰かを呼んでくるから」


もうひとりの誰かもわたしを見下ろす。


「っ!?」


わたしは声を失った。


その人はそれだけをわたしに伝えると、何故か持っていた花束を解き、穴の中に降らせた。青と白の、夏空みたいな花たちだった――

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