愛しいカタチの抱きしめかた
「……心配してないよ、なんて、わたし言えないよね。そこまで、何も、わたしはわかっていなかったもんね」
今でも曖昧だけど、きっと、どこかにそういう気持ちはあるんだろう、わたしの中。わかってたら、逃げなかったかもしれない。
ふわりと頭を撫でられた。落とし穴に腕を突っ込む百瀬の肘が土を削って匂い立つ。
「みーちゃんが気にしないでもいいことだ」
つむじを押されたり、指で髪をくるくると巻きつけたりされる。伸ばされた百瀬の手がずいぶんと近い。見上げると、おそらく腹ばいで寝転がりながら眺められていて。
「なんか百瀬、金魚鉢を覗いてるみたい。制服もっと汚れちゃうよ?」
「もうとっくにアウトだし構わないよ。――何? 照れてるの?」
「っ」
わたしの長い髪は百瀬の指に絡められ、そして、見下ろされたまま。
穴の中。体育座りのわたしは、本当にペットの金魚みたいに、主人の言動に反応する。照れてるのかと言われればそんなふうになってしまうのが悔しくて、知らず口調はぶっきらぼうなねなっていた。
「照れてたら公衆の面前で手を繋いでダッシュなんてしなかった。思春期に負けたのは百瀬の方じゃないっ」
「何それ」
「……、なんでもない」
勝手に中学生の頃のことを責めるわたしは、とんでもなく横暴だ……。