愛しいカタチの抱きしめかた

 
 

「みーちゃん。このケーキ、とてもとても好きだろう?」


放課後の図書室にて、向かい側に座った百瀬が私に意見を求めてくる。


今日は部活が休みで、いつもわたしのそれに合わせて帰りを待っててくれるから、たまには、お礼にもならないかもしれないけど、百瀬の都合に付き合うよと提案したのに、わたしたちは何故か図書室にいて。


……これじゃ、待たせてるいつもと一緒じゃない。


私は思うのに、百瀬はとても楽しそうで。 そして、何故かケーキのレシピ本を開いては、頷きながらページをめくってる。


今、百瀬が指差しながら開いているページはガトーショコラで、クーベルチュールチョコレートをふんだんに使った、ぎっしりと中身の詰まった印象がお腹を刺激する。ふわりとしたケーキよりも好みのそれは、悔しいけどとても美味しそう。


「――うん。そこそこ、ドンピシャ」


「あ、やっぱり?」


「そっ、そこそこだからっ!」


なんとなく、全てを肯定するのは憚られて言ってみた返事は、難なくその奥底を覗かれてしまったみたいだ。


静かな図書室の空気が、なんだか居心地を不安定にさせる――なんて感じるのは、わたしが曖昧すぎるからかもしれない。

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