愛しいカタチの抱きしめかた


汗臭いよ。言おうとしたけど思いとどまる。返ってくる言葉に翻弄されそうだったから。


百瀬からは、当たり前だけど、違う洗剤の匂いがした。


「も……っ」


最後まで紡げるかどうかも怪しかったわたしの言葉はそのとき、何かがばさりと落ちる音が図書室に響いて遮られた。


「っ!?」


慌てて互いの身体は離れ、そっと、本棚を隠れみのにしながら音のした方を覗く。


音のしたそこは、本棚が並ぶ絨毯ゾーンとは材質が異なるリノリウムの床、読者スペースの一角にある新聞コーナーだった。


リノリウム独特の足音を軋ませながら、そこにはしゃがみこんで散らばった新聞紙を集める男子がいて。


「――間宮?」


百瀬がかけた声に振り向いた男子は、ああと頷きながらわたしたちを見上げる。


「ああ、百瀬か。久しぶり。――ああ、日紫喜みのりさんも一緒?」


「そうだけど」


「……う、ん」

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