考えが甘いんだよ【短編】
動き出す
その事件は付き合って一年間を目前としたある日の放課後だった。
「巧弥くんかーえーろぉ?」
「ずるいぃ〜!私も私もぉ♪」
「いーよ、帰ろーぜ!」
「「やったぁ!」」
「巧弥くんっ、私とも帰らな「帰らない」
やっぱ、そうだよね…
「はぁ?うざっ、上野うざ。なんなの?菜津美と付き合ってんじゃないの?それなのになんで?」
「うるせーし。くちだすな「嫌よ。好きなんでしょ?菜津美のこと。ならもっと大事にしなさ「は?好きじゃねーし。そんな、なよなよした女。」
「ひどぉっ、巧弥くん。そんなこと言っちゃダメだよ?」
「うっさい、早く帰ろうぜ。」
心のどっかで期待してた自分が恥ずかしい。
馬鹿みたい。
好きになってくれるはずなかったのに。
「菜津美…。ねぇ、もう別れなよ?もう見てられないよ。辛そうな菜津美。」
「しーちゃっ。…うっく。ひっく。…っうーー。」
ポロポロ涙を流す私にしーちゃんは優しく肩に手をおいて人気のない教室に入る。
「これまでずっと我慢してたんだね、菜津美。辛いのに、笑顔で過ごす菜津美を尊敬してたんだよ?だから私は見てみぬふりしてた。菜津美が選んだ道ならそれでいいのかなって。だけど、もう見てられない。菜津美、別れなよ。」
「ぅうっ。しーちゃんっ、別れたほうがいいのかなぁっ。ひっく。」
「いいよ。そのほうが幸せになれる。」
「でもっ、でもぉっ、だっ、大好きなんだもんーっ。辛いよしーちゃん。でもっ、ひっく。巧弥くんをなくすほうが、辛い…」
「菜津美!!幸せになってよ。お願い。別れてよ。なんで辛い道を選ぶの?なんで幸せになろうとしないの?ねぇ、菜津美。菜津美は逃げてるよ!きちんと上野と向きあいなよ!真っ正面からぶつかりなよ!言いたいことちゃんと伝えなよ!」
「しぃぢゃんっ、うっく。ごめっ、ありがどう。ひっく。私、向き合う。もう逃げないから。」
いっぱい泣いたら目が真っ赤になって腫れたけど。
でもすっきりした。