何も知らないふりをして
いつも通りに支度をして、いつも通りに家を出た。
そしていつも通りに、登校した。
そしていつもとは違って、2-Aの靴箱に靴を入れた。
春休み前までは1-Aの靴箱に靴を入れて、3階の1-Aの教室に行っていたけど、今日からは変わる。
まだ2年でのクラスは発表されてないから、そのままA組の教室へ向かう。
「おはよー、光ッ」
教室をあけると、理紗がいつものように笑ってそう言った。
「おはよ」
私もいつも通りに返す。
理紗と私の家は離れているため、一緒に登校したりする事はない。
下校はときどきあるけど、帰りにちょっとどっか寄って行こう、という時くらいだ。
………そんな事を考えていると、つくづく私の友達と呼べる人は理紗だけだと思う。
高校に入ってなんとなく話すようになったのが理紗なのだけど。
「ねぇねぇ光、今日クラス替えじゃん?どうしようどうする?」
「今更どうにかしたってどうしょうもないと思うけど」
「ったく光はいっつもー!いいじゃんちょっとくらいドキドキしなよ!あ~、誰と一緒のクラスになるかなぁ~」
別に私はあんまり興味ないし、と言おうとしてやめた。
いや、とくに理由はないけど。
誰と一緒になろうが、あんまり関係がないと思う。
部活にも入ってないから特別な仲間もいないし。
理紗とも、クラスが離れたら終わりくらいの関係だと思うし。
理紗は他にもたくさん友達いるしね。
別に誰かと仲良くしなくても、困ることはない。
敵がいなかったら味方も必要ない。
「あ、光、智広様となれたらいいね!」
理紗のその言葉に、思わずため息をついた。