何も知らないふりをして
「…なんで?」
いきなり出てきたその名に、少なくとも良い気分はしなかった。
「ん~?いや、本当に。マジかっこいいから!光もきっかけあったら、なんかあるかなーって?」
なんで理紗はそう、イナツキと私をくっつけたがってるわけ?
「だから、知らないし。興味もないって」
こう言っておいた方が、きっと楽な気がしてそう言った。
少なくとも、理紗の思い通りにはなりたくない。
――――――それに稲月君は、私の事なんて知らないよ。
その言葉は、胸の奥にしまいこんだ。
キーンコーン…とチャイムが鳴って、移動の合図だと分かった。
始業式が始まる。
私たちは、揃って体育館へ移動した。