何も知らないふりをして
「若林 敦也!A組!」
「はい」
「――――これで全員終わったな?」
最後の若林君が呼ばれ、全員のクラス発表が終わる。
担任のその声に、誰かが終わりましたーと反応した。
その時、良いタイミングでチャイムが鳴る。
クラス移動の時間だ。
「じゃぁさっき言ったクラスに、それぞれ荷物と机を持って移動しろー」
担任の声に従って、ぞろぞろと皆が移動し始めた。
「光ー!離れちゃったよ!」
理紗がそう言って、私のところにやってきた。
「そうだね」
「うん、…離れたくなかった」
「…大丈夫だよ。理紗にはちゃんと他にも友達がいるんだから。一人って事はないよ」
「違うよ、光と一緒が良かったの!」
…一体、私の何が良くてそこまで思ってくれているのか。
私なんて理紗の事、冷たく適当にあしらっているのに。
理紗を傷つけようとしてそうしているわけじゃないけどね。
「…じゃぁ、また一緒に帰ったり、話したりしようね」
私にしては珍しく、笑ってそう言うと、理紗は倍くらいの笑顔で「うんっ」と頷いた。