何も知らないふりをして
よいしょ、と机を動かして、座って待つ。
なんか眠くて、目をつぶっていた。
実際に眠らなくても、目をつぶるだけで多少の睡魔は撃退される。
「よしっ、全員そろったな!」
そんな担任の声が聞こえて目をあけた。
「じゃぁ、軽く自己紹介でもしていこう!」
…めんど。大体一番の私にとって、こーいうのは何言えばいいのか分かんないんだよね。
「せんせぇー、何言えばいいのー?」
「そうだな…、じゃぁ、名前、誕生日、好きな食べ物でいいんじゃないか?」
「適当!!」
「いいだろ!はい、じゃぁ出席番号一番!」
そう言われて指を刺され、嫌嫌だが立ち上がった。
「芦影 光、11月14日生まれ、好きな食べ物は…コーヒーゼリー。よろしくお願いします」
「ハイっ、次!」
今のでよかったか。
そう思ってホッ、としたのも束の間
「稲月 智広です」
真後ろから聞こえた声に、思わず振り向いた。
「誕生日は7月13日。好きな食べ物はなんだろうな、あっ、アスパラガスのベーコン巻き!よろしくお願いします。」
きゃあああああああああああああああああああと、女子から歓声が上がった。
私は茫然と、稲月智広を見ていた。
「…いな…つき君………」
まさか、同じクラスなんて。