何も知らないふりをして
「じゃぁ知れば興味持つのね?」
そういう事じゃないと思うんだけど、という言葉は言わないでおこう。
「なんで理紗はそんなにその…イナツキの事を私に知ってほしいわけ?」
「きまってるでしょ、光」
いや、何も決まってないでしょ。
「ねぇ光、もうすぐあたし達高校二年生よ?花の十七歳よ?それなのに、あたしはともかくなんでそんなに光は…、光は、なんというか、青春って感じがないのよ?」
「だから何?」
「とにかく、光はもっと男子とか恋愛に興味持たなきゃダメだと思うの!」
ガッツポーズをして、わざわざ立ち上がって、大声で、理紗はそう言った。
正直目立つしやめてくれって思う。
「…つまり、最近話題になってる男子くらい知っておいて興味を持てと?」
「そうっ!そんでそこから、光のブルースプリングを開花させようって事よ!」
ビシッ!とどこかを指さして、きらきらの笑顔でそういう理紗。
…いくら休み時間でも、ちょっとうるさいよ。
「…ちょっとね、理紗。わざわざ青春を英語で言う必要を説明してほしいし、開花の意味も教えてほしいな」
「んもー、ごちゃごちゃ言ってないで!いい?じゃぁ教えてあげる。イナツキ君の事!」
いいよ……、もう、知ってる。
「はいはい分かった分かった、じゃぁ教えて?」
何も知らないふりをしてそう言うと、理紗はとても嬉しそうに笑った。