指切り
私はおねえちゃんから体を離し顔を見る。
生気のない瞳。ぽかんとあいた口。頬についた赤いナニカ。
私がおねえちゃんから遠ざかるとおねえちゃんは人形のように倒れこんだ。
まるで死んでるみたいに。
「っ…!!??」
一瞬、救急車を呼ぼうと思った。
しかし救急車を呼んで事を大きくするのもなんとなくいけない気がしたので
とりあえずおねえちゃんを担ぎベットに運び込んだ。
布団を掛けるとスッと目を瞑り寝息をたてはじめる。
おそらく疲れていたのだろう…。
私はおねえちゃんの頬についたナニカもハンカチで拭って部屋から出た。
ギシギシと階段が鳴く。
そういえば母親と父親はどうしたのだろう。
というか今、何時なのだろう?
リビングの壁に掛けてある時計を目を凝らしながら見る。
短針は8時を指していた。
暗いから普通に考えて夜だ。
夜8時…まぁ遅くはない時間だった。
「…仕事いってるのかな…?」
独り言をつぶやき部屋から出た。
階段を下りるとまだ変な匂いがした。
なんというのだろう。魚屋で嗅いだことのあるようなかんじの
生臭い匂い…。
匂いの元を探るために臭さが増すほうに進んでいく。
行き着いた場所は、生ごみの袋だった。
「…そりゃ生臭くもなるかな?」
たいして気に留めるわけでもなく、小さく零す。
蛆虫でも湧いてしまったのだろうか?
そう思いしばらく生ごみを捨てにいってないことを思い出す。
そういえば今週はもう生ごみを出す日はない。
来週に回すのも臭い気がするがここまで放置した自分が悪い、と思い
そのまま放置していたのだった。
しーんとしている部屋に置いてあるTVをつけると、その部屋は一気に明るさを取り戻す。どうやらお笑い番組がやっているようだ。
私はソファーに倒れこみ、寝転がりながらTVを見て、笑う。
おなかもまだ空かないし、おねえちゃんも寝ている。
しばらくこうして休んでいたい気分だった。
しかしそんな願いも叶うわけがなく、電話の呼び鈴が家中に鳴り響く。
私は気だるいながらも体を引きずり、電話口にでた。