悪魔の目
幸せな日々はあっという間に過ぎて行った。

僕は必死の練習もあってか、周りの子よりも早く言葉を話す事ができるようになった。頭の良い子に育ち、幼稚園へ入る前には、自分の名前の漢字も書けるようになっていた。

僕の家庭は比較的に裕福で、私立の幼稚園に通っていた。母親は近所でも美人と評判で、母親と手を繋いで歩く時はいつも鼻高々だった。

僕が4歳になる年の春の事。

僕は紺色のブレザーに身を包み、黄色いベレー帽に青の蝶ネクタイ。鏡に映る自分の姿を見て、僕はなんだか誇らしい気分になる。

母親はピンク色の上下のスーツ。髪はパーマをかけて、気合いが入っている。

石鹸のような、爽やかな香りのオーデコロンをシュッと一回振りかける。

15年以上も前に戻っているため、時代を感じるが、とても似合っていて息子の僕が見ても魅入ってしまうほど綺麗だった。

「優太ちゃん、さあ行きますよ。」

今日は幼稚園の入園式。

そう、悪魔のあいつに出会う日だ。
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