悪魔の目
僕は母親に手を引かれ、幼稚園へと向かった。
木漏れ日が暖かく、幼稚園へ向かう道には、満開の桜並木が広がっている、そんな春の日の事だった。
桜並木は入園を控えた僕を、祝福しているかのようにも見えた。
「あ、ほら、優太ちゃんてんとう虫だよ。」
「桜が咲いてるねえ、綺麗だねえ。」
ヒラヒラといくつもの、桜の花びらが僕の肩に落ち、母親はそれをはらう。
母親が上機嫌で話しかけてくるが、僕の耳には何も入ってこなかった。
僕の小さな心臓は今にも張り裂けそうで、ドクドクと波打っていた。頭の中は憎悪で埋め尽くされ、思わず母親の手を握る手に力が入る。
「…優太ちゃん、どうしたの?具合でも悪いの?」
「んーん、なんでもないよ。」
僕はハッと我に返り、母親にニッコリ笑って見せた。
「優太ちゃん、緊張してるのね。大丈夫よ。」
母親も優しい笑顔で返してくれる。違うんだよ、違うんだ、母さん。あいつが、あの悪魔がいなかったら、僕は幸せになれたはずだったんだ。
木漏れ日が暖かく、幼稚園へ向かう道には、満開の桜並木が広がっている、そんな春の日の事だった。
桜並木は入園を控えた僕を、祝福しているかのようにも見えた。
「あ、ほら、優太ちゃんてんとう虫だよ。」
「桜が咲いてるねえ、綺麗だねえ。」
ヒラヒラといくつもの、桜の花びらが僕の肩に落ち、母親はそれをはらう。
母親が上機嫌で話しかけてくるが、僕の耳には何も入ってこなかった。
僕の小さな心臓は今にも張り裂けそうで、ドクドクと波打っていた。頭の中は憎悪で埋め尽くされ、思わず母親の手を握る手に力が入る。
「…優太ちゃん、どうしたの?具合でも悪いの?」
「んーん、なんでもないよ。」
僕はハッと我に返り、母親にニッコリ笑って見せた。
「優太ちゃん、緊張してるのね。大丈夫よ。」
母親も優しい笑顔で返してくれる。違うんだよ、違うんだ、母さん。あいつが、あの悪魔がいなかったら、僕は幸せになれたはずだったんだ。