ミク。
『‥なぁ。フィンって呼んで良い?』

しばらく会話も無く見つめ合って、部屋の掃除をして、未來から来た為ボロボロになってしまった服を捨てて、代わりに男性物の服を貸して貰って、洗濯物を干してたら不意に耳元で囁かれたので最初はなんの事だか分からなかったけど、再び同じ問い掛けをされた事で私の名前について同意を求められているのだという事がようやく理解出来たので静かに頷いた。

「ありがとぅございます。フィンですね?個人ネイムフォルダーに保存して置きます。」

『…何、バカ言ってんだよ。』

未來での事を何も知らない彼に抱き寄せられて頭を撫でられた。彼は、何かを勘違いしているのかもしれないと思ったけど、でも、何も言えなかった。出来る事ならこのまま勘違いされていたいと思ったからだ。
でも、この時はまだ分からなかった。私が彼に何を期待してしまったのか?
彼がこれからどういう想いを抱くようになるのか?
お互いにまだ、分からなかった。

『フィン。』

「はぃ」

『俺の事、ブラックって名前で呼べよ。』

「…………ブラック」

これが二人の生活の始まりだった。これが全ての過ちの元凶だったけど知る術は無かった。
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