ミク。
「姉さん、これで良いかな?」

《えぇ。さすが!冬は良い腕してますね。》

小さいながら美しく、色気まで持っていた冬の神は容姿に全く劣らない賢さや才能まで持っていて、引き取られてからたった一年たらずで下界という場所に住まう人間で言えば十二歳、前後に見える姿に成長していて育母の事は、姉さん。と気軽に話し掛けてくるくらい良くなついていた。また、育母をしている珠里夜自身も気が利いて努力家の彼を本当の弟のように気に入っていた。

《では氷、水、雪を操る術や技で教える事は全て無くなったので、一度お昼にしましょ?》

「はぃ。何か手伝う事はある?」

《今日ぐらいのんびり御飯出るの待ってて下さい》

「いぃよ。メイン造るから姉さんデザート何か造って?」

勉強や術、能力開花だけでは無く、手料理から礼儀作法、食事のマナーに至るまで一度教えればどんな事だろうと即出来るようになってしまう彼にはほとんど教える事が無くなって来て、だからこそ視える未来が哀れで珠里夜は思わず溜息を溢した。

「どうかした?」

プロ並にキャベツを綺麗な千切りにカットしながら心配そうに視線を向けて来た彼に、彼女はある事を話して聞かせた。
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