ミク。
何か勘付いたのか?ゾゾッと込み上げてきた悪寒に肩を震わせ、冬は突如大声をあげて体制を乱した。

「‥女の人も男の人もだよ!?」

《関係ありません。》

ふと浮かんで脳裏をかすめて行った考えを即座に振り払おうとする哀れな美しい少年の耳に、クールな大人の女性を思わせる珠里夜の冷静な、だが冷たい台詞が届けられる。

《寿命が無いとは、こういう事なのです。何を買おうと、何を食べようと、終わり無く生きていたらいずれ買う楽しみや食べる楽しみには飽きが来るのです。すると、どうなると思いますか?》

「…………‥」

《欲に走るのです。天界や地獄で多夫多妻やら同性婚が目立つのは、その為です。》

「………そんな眼で…見られてたってゆーの?」

《えぇ。》

「…………なんで…?」

《貴方が最上級悪魔のように美しいからです。貴方の美貌と実力は昨日出場され優勝を手にした天界一武道会で既に噂になり、それで余計下らない者達にも火を灯けたのでしょう。》

「…‥嫌だ……イヤだよ姉さんっ!」

たまらず震えあがって走り寄り、胸にすがり付いて来た少年を抱き締める彼女の腕にも力が入る。けれど、今はただこうして抱き締めてやるぐらいしか出来る事は無い。

《冬‥。泣かないで…‥泣かないで、冬!》
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