ミク。

『おぃおぃ、…に言ってんだよ？もしかして酔ってるぅ？』

ケラケラ笑いながら彼はその乗り物がバイクという物だと教えてくれたので、今度こそ信義を確かめようと思い、こう質問した。

｢それでは、何故瞳や髪が赤いのですか？｣

そのとたん、彼の口から笑い声が消えて、一気に表情が冷たくなった。

『染めたに決まってんだろーが！』

言い方まで乱暴になって厳しく睨まれてしまったので彼に詳しく聞く事は辞めて自分の知能回路にデータを送って調べた所、彼ぐらいの若者がバイクに乗って走り回ったり髪を染めたり、カラーコンタクトという物を使って瞳の色を変えたりするのがこの時代の流行だったという事が分かって、目前の彼の体格や声音のデータから三十年後の姿を推測してみると、かなりの確率で主様になるという事が分かってとても慌てた。

｢ごめんなさぃ。謝ります…‥謝りますから私を主様の大切な人に会わせて下さい。｣

『はぁ？』

｢主様の大切な人を知りたいんです｣

彼はバイクから降りると私を睨みつけたまま近付いて来て腕を掴みあげるなり無言で岬近くに建つ白い切妻屋根の家の中へと連れ込んで内側からドアに鍵を掛けてしまった。