【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
相変わらず、美沙との距離は縮まらないまま、1週間が過ぎた日曜日。
母さんに頼まれて夕食後にスーパーまで行き、角を曲がればすぐに家に着くというところで、美沙の声がしたので反射的に隠れた。
「今日はごめんね。わざわざ送ってもらって・・・」
美沙の口調から相手が男だとわかった。
男と一緒やったんか?
俺は、壁からゆっくりと顔を出し、様子を伺った。
美沙より大きな黒い影に自然に目がいった。
男と二人か・・・。
光の具合で男の顔までは見えなかったが、アキラではなさそうだった。
美沙が言ってた好きな男か?
俺の中の嫉妬心がフツフツと沸き立ってきた時、男が声を発した。
「いいよ。気にしなくて。じゃあバイバイ」
その聞き覚えのある声に、耳を疑った。
健吾?
その声は、毎日聞いている健吾のものだった。
俺は、健吾がこちらに向かってくることがわかり、隠れることをやめた。
「あっ、准」
『あっ』じゃないし!
お前、何をしてたんや?
俺に黙って美沙に会って・・・。
健吾を睨み、美沙の顔も見ずに前を通り過ぎ、家に入った。