【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「准、おはよう」
健吾は、次の日の朝、何もなかったように俺に話しかけてきた。
どれだけ図太い神経してるねん。
「健吾、なんで昨日、美沙と居てたんや?」
睨み付けながら、乱暴に言葉を投げ付けた。
「あぁ、美沙ちゃんがさ、俺のバイト先に来てくれてさ・・・」
「美沙が?」
俺は健吾のバイト先なんか教えてないし。
眉間にシワを寄せ、詳しい説明を求めようとした。
「なんか、プレゼントか何かを探してたぞ?」
プレゼント?
誰に?
友達とか?
あれ?健吾のバイト先って・・・。
「健吾のバイト先ってさ・・・」
「メンズのみやで」
全てを聞く前に、健吾は求めていた答えを与えた。
・・・男に?
おじさんの誕生日は10月やし。
それより前に、なんで健吾が美沙を家まで送ってたんや?
考え込む俺に対して健吾は続けた。
「ちょうど俺バイトが終わる時間やったから、美沙ちゃんと飯食いに行った」
「はぁ?」
意味わからんし!
美沙もなんで着いて行ってるねん!
「美沙ちゃんって、ほんま、いい子やなぁ。あの笑顔がかわいいよな」
ニコニコしながら話す健吾に対して、嫌悪感しか生まれなかった。
「飯食いに行っただけやんな?」
「まぁ、いくら俺が美沙ちゃんのことが好きでも、付き合う前から手は出さんよ」
はぁ?付き合う気なんか?
肯定されるのが怖くて、それ以上は聞けなかった。
俺の頭の中は一日中晴れることはなかった。