【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
その後、健吾は毎日のように美沙の話をしていたが、美沙は健吾のことは一言も発することはなかった。
隠してる?
俺にいちいち話さないよな・・・。
でも・・・毎日学校から帰ったら、うちに来てるし・・・会ってないんかな?
あっ、健吾はバイトしてるしな。
「美沙ちゃんに会いたいなぁ・・・」
わざとらしく目の前で言う健吾を無視して、窓の外を見ていた。
俺って卑怯やんな。
毎日、俺の家に来てるのに、絶対に言わないし。
でもさ・・・しかたないやんな。
俺だって好きなんやから・・・。
一回諦めるとか言っておいて、また好きとか言われてもさ、納得できへんし。
健吾に対する罪悪感を消すために、言い訳をたくさん並べた。
終業式も終わり、明日からはようやく春休みが始まる。
柔らかな陽射しは、もう春になっていたが、突然やって来た寒波に身が凍えてしまいそうだった。
「明日からはバイト三昧やー!」
伸びをしながら言う健吾に対して、素朴な質問をした。
「美沙には会わないんか?」
「美沙ちゃん?会いたいけど、バイトやからな」
そう言う健吾に安心する自分が悔しくてしかたなかった。
「そう・・・」
「やっぱり、准には負けるんかな〜」
その余裕たっぷりの言い方は何?
笑いを浮かべながら言う健吾に対する怒りは増える一方だった。