【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「はぁ・・・。なんか寝た気がしない」
窓から差し込んできた陽射して目が醒めた准はゆっくりと、重い体を起こした。
怠い・・・。
准は、ゆっくりとベッドの端に座り、窓の外を眺めた。
美沙は旅行か・・・。
すっかり太陽が昇っている空は明るく、ダラダラと過ごしている自分が嫌になった。
一体、何時や?
13:05
・・・昼過ぎてるやん!
ボサボサの髪の毛を掻き乱して、ベッドから立ち上がった。
パジャマを脱ぎ、ベッドに投げた時、ふと枕元に何かがあるのに気付いた。
グレーのリボンが付けられている紺色の箱が置かれていた。
「何これ?」
疑問を抱きながら、箱を手に取ると小さな紙切れがひらひらと落ちたのに気付いた。
・・・なんや?
ゆっくりと、紙切れを開いくと自分の目を疑った。
【准へ
16歳のお誕生日、おめでとう!
准が何が欲しいのかわからなくて、たまたま入ったお店で、ケンゴ君がいたから、准が欲しいもの聞いちゃいました。
気に入ってくれるかな?
私は、准に避けられるのが一番辛いです。
私が旅行から帰って来たら、笑顔で迎えて欲しいな。
どこまでもわがままでごめんね。
いつもありがとう。
美沙より】
美沙・・・
これを俺のために・・・
ごめん・・・俺・・・勘違いしてたんや・・・。
あんなことしてごめんな。
きついこと言って、ごめん。
勝手に勘違いして、健吾に嫉妬まで・・・・・・。
・・・健吾は?
あいつ・・・もしかして・・・。
机の上の携帯を取り、健吾に掛けた。
『准?どうした?』
健吾の声がいつもと変わらないトーンであったことに、自分の今までの思いが胸を苦しめた。
「・・・健吾すまん」
姿が見えない相手に、無意識のうちに頭を下げていた。
『お前、やっと気付いた?』
クスクスと笑う声が耳にやけに残ったが、その明るい声が俺の心を軽くさせた。
「・・・・・・」
『俺が、お前の美沙ちゃんを横取りするわけないやん!』
「健吾・・・」
『美沙ちゃんがさ、あんまりにも真剣な顔して選んでたから、悔しくてさ・・・。罠をかけてみました〜』
「・・・・・・」
『俺、バイトに行かなあかんから、じゃあな!准、誕生日おめでとう』
「ありがとう」
『早くくっつかないと、今度こそ、俺が奪うからな!』
「わかってる」
切られた電話を見つめて、笑みを零していた。
健吾のアホ・・・いや、俺が一番ののアホやな。
美沙が真剣に選ぶ様子を想像し、美沙からもらった財布を大事に抱きしめた。
ありがとう・・・美沙。
俺も美沙に・・・。
俺は、着替えると慌てて外に出た。
一番近くのコンビニに寄って、ある雑誌を手に取ると、レジに持って行った。
『あぁ・・・これかわいいなぁ・・・でもお金ないしなぁ・・・』
俺の中には、美沙が言っていた言葉が鮮明に残っていた。
コンビニを出て、公園のベンチに座り、目的のページを探し出した。
「あった!」
どこのショップや?
えっと・・・ここやと1時間くらいで行けるやん!
俺の足は、すでに駅に向かって動いていた。
美沙・・・喜んでくれるかな?
帰って来たら、ちゃんと想いを伝えよう・・・。
素直に・・・。
ずっと、美沙のことが好きでした。