【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「・・・私もあの時へこんだんやで」
「何に?」
目を真ん丸にして美沙に聞いた。
「実佐ちゃん」
「あ、あれは・・・・・・」
突然出てきた名前に、動揺を隠すことができなかった。
「なんかさ・・・やっぱり私だけが、ずっと好きなんやなって思ってさ・・・。
しかも同じ名前やし・・・同じ名前なら私じゃあかんの?まで思った」
美沙は俯き、ぽつりぽつりと、詰まりながらも自分の気持ちを声に出した。
「名前は・・・『ミサ』やったから、付き合ったのかもしれへん・・・。
やっぱりどこかで美沙を追い掛けていて
・・・だから、彼女のことを好きにはなれなかった・・・・。
手も繋がれへんかったんやで・・・美沙とは繋げるのに」
美沙を目の前にして、自分の正直な気持ちを声に出していた。
「でも、あれは私が半ば強引に・・・・・」
「それはそうかもしれないけど、嬉しかったし」
「それはよかった」
安心した俺の笑顔につられて美沙も笑っていた。
しかし、すぐに俺はあることを思い出した。すると、俺の笑顔は消えていった。
「そんなに俺の気持ちを揺さぶっておいて・・・健吾の話ばかりするからさ、めっちゃ腹立ったんやで」
すねたような表情をする俺に、美沙は笑いをこらえるのが精一杯だった。
「ふふふ・・・あれはわざとケンゴ君が、准を罠にかけようかって」
「健吾のやつ!ってか、俺、どれだけ罠にかかれば気が済むんやろう」
自分でも呆れて、笑うしかなかった。
「でも、高村くんも優しいよね」
「だって、あいつも美沙のこと気に入ってるからな」
あ・・・こんなこと言ってよかったんかな?
あいつが知ったら、怒られるなぁ・・・。
「知ってるよ。告白されたし・・・」
「はぁ?あいつ!」
突然の告白に思わぬ大声を発してしまった。同時に怒りが込み上げて来た。
あいつ、美沙のことを諦めるみたいなこと言って、ちゃっかり告白してるし。