【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
Trap5 女の涙
相変わらず、綾香ちゃんからの誘いには応え、遊んでいる。
そして今日は、この前、告白されてから初めて会うことになっている。
返事せなあかんよな・・・。
とりあえず、先に断ったら気まずいから、帰りにしよう。
今日は、買い物に付き合わされた。
「どっちがいい?」
綾香ちゃんが持っているのは、ピンクと白のスカート。
「ピンクかな?」
「やっぱり?准くん、綾香の好きな色知ってくれてるんやぁ」
俺と会う時はピンクばっかり来てるから嫌でもわかるし・・・。
綾香ちゃんはピンクやけど、美沙は白のかな・・・ってなんで美沙やねん!
「ねぇ、准くんどうしたの?」
「いや、別に」
突然、頭に浮かんだ女王様に動揺してしまった。
一通り、ショッピングが終わり、いつものように駅で別れるつもりだったが、俺は最後に大きな仕事をしなくてはいけなかった。
「綾香ちゃん、この前の返事なんやけど・・・」
言いにくかったが、話を切り出した。
「付き合ってくれるん?」
目の前の綾香ちゃんは、期待しているのか笑みを零している。
いや、付き合って当然よねぐらいの目力で見つめてきた。
そんな彼女の表情を見ないようにして、さらに口を開いた。
「いや・・・綾香ちゃんとは付き合えない」
「なんで・・・?」
うわっ・・・泣き出したし・・・どうしよう・・・どうしよう・・・。
「なんでって・・・」
「綾香はこんなに准くんのことが好きやのに・・・」
そう言うと、綾香ちゃんは俺の胸に飛び込んで来た。
えっ??
「准くん・・・」
涙目で・・・名前を呼ばれたら・・・。
俺は、綾香ちゃんの背中に腕を伸ばして抱きしめようとしていた。
しかし、一瞬見た目の前にいた人物を見て、手が止まってしまった。
「美沙・・・」
抱き着いてきてる綾香ちゃんなんて気にせずに、美沙の名前を呟いていた。
泣いてる・・・。
あの美沙が泣いてる?
頭の中は完全にスローモーションになっていて、動こうにも手足を動かすことができなかった。