【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「美沙」
もう一度、名前を呼んだとき、美沙は急に走り出した。
綾香ちゃんから離れ、美沙を追いかけようとしたが、目の前の女がそうはさせてくれなかった。
「行ったら嫌・・・」
綾香ちゃんは、涙目で俺のコートを引っ張っていた。その目には涙。
「・・・・・・」
「あの子が好きなん?」
「いや・・・違う」
「それなら私といてよ」
潤んだ瞳で聞いてくるが、今の俺にはそんなものは、何の効力もない。
「ごめん。君とはいられへん。もう誘わないで」
そう言うと、まだ抱きついている綾香ちゃんを引き離し、美沙の後を追った。
思い切り走り、美沙を追い掛けた。
しかし、綾香ちゃんに止められていた分、ロスがある。
「美沙!」
周りも気にせずに、美沙を呼んだが、彼女が振り返ることはなかった。
ようやく縮まってきた距離に安心したところで、美沙は家に入ってしまった。