【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~



ドンッ!


「うっ・・・」


誰かに腹を殴られた。きっと、強盗だ。


母さんは?おばさんは大丈夫なんか?


「この家には・・・お金はありませんよ・・・」


殴られた腹部を押さえながら、必死に声を絞り出した。


きっと、凶器を持ってるんや・・・一人か?複数犯か?


あっ、顔を見ておかないと・・・この力やと男やな・・・どんな男や?


いくつくらいや・・・?


あぁ、俺は・・・もう死ぬのか・・・?


もっとやりたいことがあったのに・・・。


恐怖に震えながらもゆっくり目を開けた。


「やっと起きた。さっきから起こしてるのに全然起きへんのやから!」


目の前には、腕を組み、仁王立ちをしている女王様。


「み、美沙!」


「美沙じゃないわよ!一体何回呼んだと思ってんの!」


はぁ?呼んだ?


全然気付かんかったし・・・。


ゆっくりと上体を起こそうとしたが・・・なぜか腹部に激痛が走った。


「いてて・・・」


「あら?やり過ぎた?」


『やり過ぎた?』ってまさか。


「お前か!殴ったんは!?」


「そうやで」


しれっとした顔で言うなよ!


めっちゃ痛いし・・・この女どんなけ馬鹿力やねん!



「もっと優しい起こし方は知らんのか!」

「准が早く起きへんから悪いんやろ!」

「だからって、殴るなよ!」

「あーうるさいなぁ!」


うるさいってさ、全部お前が悪いんやん!



「あ~うるさい、うるさい」

と耳を押さえている美沙を睨みながら、ベッドにあぐらをかいて、体制を整えた。




「で、何の用?」



「はぁ?『何の用?』はこっちの台詞や!道端で大声で人の名前を呼んで!恥ずかしくないん?!」


はぁ?



俺が?



道端で?



美沙を?



大声で?



呼ぶ?



はっ!


そうや!



ようやく美沙の言っていることが理解できた。



< 37 / 220 >

この作品をシェア

pagetop