【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
その男が母さんが話してた『先輩』なんか?
『彼氏』なんか?
俺は、二人の前に立つと、笑顔で言葉を発した。
「美沙、おかえり」
若干、『美沙』の部分を強調して・・・。
「准?」
不思議そうな顔をして見つめている美沙なんて見ないで、俺は目の前の男を睨んだ。
お前は誰や!
こんな暗くなるまで美沙を連れ回してどういうつもりや!
「美沙ちゃん、誰?」
その男も俺から目を離さないで、美沙に俺の正体を聞いた。
「あっ、彼はお隣さん。准、こちらは・・・・・・同じ学校のアキラくん」
ア、アキラくん?
へ〜名前で呼ぶんやぁ。
「こんばんは。美沙をわざわざ送ってもらってありがとう。もう大丈夫やから」
そう言うとアキラは、俺をさらに鋭い目付きで睨み付けてきた。
俺らの間には、火花が散りそうな視線が交差していた。
「じゃあ、美沙ちゃん。またね」
アキラは、さっきまでの顔とは違って優しい笑顔で美沙を見つめて言った。
「うん。バイバイ」
美沙がそう言うと、アキラは最後に俺を睨み、帰って行った。
俺・・・一体何をした?
正気に戻った俺は、自分のとった行動が信じることができなかった。
ぼんやり立ち尽くしてると、いつもの美沙が
「何、ボーッとしてんの!うちに来たんでしょ?早く入ったら?!」
と、さっきとは違う口調で俺に投げ付けた。
なんやねん!
アキラには優しい声を出してたのによ!
「入らへんの?!」
動こうとしない俺にイライラする美沙の口調がさらにきつくなる。
俺は、そんなことはお構いなしに、ある質問を投げかけた。