【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
駅のホームで美沙を見かけた日、美沙たちは友達が所属する楽団のコンサートへ出掛けていたと、後日、母さんから聞いた。
「よかったみたいやで。准も美沙ちゃんに連れて行ってもらったら?」
「俺より彼氏と行くんじゃないの?」
リビングのソファーに足を組みながら、イライラする気持ちを押さえて返した。
「あれ?准、やきもち?」
「はぁ?違うし!」
『やきもち』は、好きな奴に対して起こるんやろ?
俺は、美沙のことが好きではないから、『やきもち』ではない。
じゃあ、何や?と言われたら・・・そう、『同情』。
しかも彼氏に対する同情。
あいつの本性を知ってしまったら終わり、地獄の日々が待っている。
あんな顔して、やることと言うことはそこらの不良より質が悪いで・・・絶対。
「准、あんたぐずぐずしてたら、美沙ちゃんを取られるで」
笑いながらそう言う母親に対して准は、不満そうな顔をしながら
「母さん、なに勘違いしてんの?俺は美沙のことは好きじゃないし」
言った瞬間、胸がチクリと痛むのがわかった。
「そう?」
『ふふふ』と意味ありげな笑みを浮かべる母さんを無視して、自分の部屋に向かった。
俺は、あいつのことなんか・・・好きじゃないし・・・。