【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
ふぅ、暖かい・・・。
ドラッグストアの暖房の効き具合に安心し、目的の場所に足を進める。
「消臭スプレー・・・あっ、ここやな」
数ある消臭スプレーの中から、美沙にもらったメーカーのスプレーを見つけ出した。
「レモン、レモン・・・」
うわっ、ないし・・・。
探し求めているレモンを置いていただろう棚だけが空っぽだった。
『ミントの香り』、『ライムの香り』はあるが、やはり『レモンの香り』はなかった。
「すみません。この種類のレモンってないですかね?」
後ろを通り過ぎようとした店員に尋ねた。
「申し訳ありません。ただいま、品切れしていまして」
「そうですか」
肩を落とし、店を出た。暖房の暖かさに馴れた体が一気に凍った。
帰るか・・・。
そう思い、家に向かおうとしたが、どうもモヤモヤした何かが胸の中で引っ掛かっていて、離れなかった。
確か・・・もう1件あったよな。
数百メートル離れたドラッグストアへと急いだ。
ほんま、俺何してるんやろう。元々なかったんやから、なくてもいいやん。
どうせ、美沙が俺の部屋に入ることなんてないんやから。
そう思いながらも、足は家とは逆方向に動き、そのスピードを上げていて、着く頃には走っている状態だった。