【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~


ふぅ、暖かい・・・。


ドラッグストアの暖房の効き具合に安心し、目的の場所に足を進める。


「消臭スプレー・・・あっ、ここやな」


数ある消臭スプレーの中から、美沙にもらったメーカーのスプレーを見つけ出した。


「レモン、レモン・・・」


うわっ、ないし・・・。


探し求めているレモンを置いていただろう棚だけが空っぽだった。


『ミントの香り』、『ライムの香り』はあるが、やはり『レモンの香り』はなかった。


「すみません。この種類のレモンってないですかね?」


後ろを通り過ぎようとした店員に尋ねた。


「申し訳ありません。ただいま、品切れしていまして」


「そうですか」


肩を落とし、店を出た。暖房の暖かさに馴れた体が一気に凍った。


帰るか・・・。


そう思い、家に向かおうとしたが、どうもモヤモヤした何かが胸の中で引っ掛かっていて、離れなかった。


確か・・・もう1件あったよな。


数百メートル離れたドラッグストアへと急いだ。


ほんま、俺何してるんやろう。元々なかったんやから、なくてもいいやん。


どうせ、美沙が俺の部屋に入ることなんてないんやから。


そう思いながらも、足は家とは逆方向に動き、そのスピードを上げていて、着く頃には走っている状態だった。


< 58 / 220 >

この作品をシェア

pagetop