【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~

****


「あのっ!」


目の前には見知らぬ女の子が立っていた。


今日はバレンタインデー。


朝から2人に告白されていて、目の前の女の子も同じ用件だろうと予想できた。


「じゃあ、准、先に帰るわ」


「ち、ちょっと待てよ」


俺の声も虚しく、健吾は帰ってしまった。


「あの・・・」


目の前の女の子が気まずそうに、声を掛けてきた。


「あっ、ごめん」


「私、水川 純って言います」


『ジュン』って俺と同じ名前やし。


「電車で見掛けてて……ずっと好きでした。私と付き合って下さい」


言葉と共に差し出されたのは、かわいくラッピングされた物。


「ごめんね。俺好きな子がいるから・・・」


「・・・そうですか」


頑張って告白してくれたのに、ごめんね。


この想いには嘘は付けないから・・・。



「じゃあ、これだけでも受け取って下さい」



苦しそうな表情で出してくる姿に一瞬気持ちが揺らいだが、姿勢をただして言った。



「・・・ごめんね。本命チョコは受け取ることはできないよ」


「わかりました。ありがとう」


そう言うと、彼女は走り去ってしまった。


「はぁ」


断るのも神経を使うもんやな・・・。


美沙はきっとこんな思いを昔からしてるんやろうなぁ。


美沙はあいつにチョコをあげるんかな?


あげるよな?


彼氏やもんな……。


ふと浮かんだ、アキラの姿を思い出しては、腹を立てていた。


< 62 / 220 >

この作品をシェア

pagetop