【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
****
「あのっ!」
目の前には見知らぬ女の子が立っていた。
今日はバレンタインデー。
朝から2人に告白されていて、目の前の女の子も同じ用件だろうと予想できた。
「じゃあ、准、先に帰るわ」
「ち、ちょっと待てよ」
俺の声も虚しく、健吾は帰ってしまった。
「あの・・・」
目の前の女の子が気まずそうに、声を掛けてきた。
「あっ、ごめん」
「私、水川 純って言います」
『ジュン』って俺と同じ名前やし。
「電車で見掛けてて……ずっと好きでした。私と付き合って下さい」
言葉と共に差し出されたのは、かわいくラッピングされた物。
「ごめんね。俺好きな子がいるから・・・」
「・・・そうですか」
頑張って告白してくれたのに、ごめんね。
この想いには嘘は付けないから・・・。
「じゃあ、これだけでも受け取って下さい」
苦しそうな表情で出してくる姿に一瞬気持ちが揺らいだが、姿勢をただして言った。
「・・・ごめんね。本命チョコは受け取ることはできないよ」
「わかりました。ありがとう」
そう言うと、彼女は走り去ってしまった。
「はぁ」
断るのも神経を使うもんやな・・・。
美沙はきっとこんな思いを昔からしてるんやろうなぁ。
美沙はあいつにチョコをあげるんかな?
あげるよな?
彼氏やもんな……。
ふと浮かんだ、アキラの姿を思い出しては、腹を立てていた。