【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「ただのクラスメートの男を名前で呼ぶんか?」
俺、駄々っ子みたいで、めっちゃ格好悪いし・・・。
俺は相当不機嫌そうな顔をしていたのだろう。
俺の顔を見て、美沙は吹き出しそうになるのを堪えて、言葉を返した。
「ふふふ・・・アキラってのは、苗字やで!」
「へっ?」
み、苗字?
「明るいに楽しいって書いて、明楽。下の名前はなんていったかな・・・シンジやったかな?」
「明楽シンジ・・・ね」
なぁんや!ってか、名前は知らんの?
なに?全く心配いらんってこと?
「ねぇ、准。あんた妬いてたの?」
えっ?
妬いてた?
そうですけど、何か?
「んなわけないやん。着替えたんならさっさと行くぞ!」
「そうやね」
俺らは再び俺の家に戻った。
俺は、自分の膨らみきった気持ちがばれてるのではないかと、ドキドキしながら美沙の隣を歩いていた。
「あ、准」
美沙は何か思い出したかのように口を開いた。
「なに?」
「准の部屋、レモンの香してたね。私があげたの使ってるんやぁ」
目が馴れた暗闇の中で、美沙の優しい笑顔が浮かんでいた。
「あぁ・・・『臭い』とか言われたら、使うしかないやん」
「そっかぁ、ごめん、ごめん。あれ嘘やし」
「マジで?お前なぁ」
「ほんま、准は素直なんやから」
クスクス、と、笑う美沙を再び抱きしめたいと思ってしまった。
『准は素直なんやから』
お前に対しても素直になれたらいいんやけどな。
そんな気持ちは冬の夜空に吸い込まれてしまった。