【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~


「美沙も准くんも素直じゃないからね・・・」


美沙の母親はため息混じりに呟いた。


「でも、准もそろそろ自分の気持ちに気付くと思うんやけどなぁ・・・あれだけ罠を用意したんやから・・・」


罠?


なんやそれ。


「次はどうする?」


美沙の母親の声で、これまでの罠の復習がなされるのを、聞き入っていた。


美沙が『きれいになった』だの、『髪を伸ばしてるだの』といった近況を話して気に留めるようにする罠。


俺が帰ってくるのを見計らって。ワンピースに着替えさせる罠。


美沙のクラスが文化祭でメイド喫茶をすることを知り、俺に美沙のメイド服姿を見せる罠。


バスツアーへ行き、二人っきりにして、美沙に昼食を作らせる罠。


クリスマスパーティー・・・これはただ親がしたかっただけ。


美沙が先輩から告白されたって嘘の情報を与え、嫉妬させる罠。


なんてことや・・。


俺は・・・見事に罠にはまったわけや・・・。


ありえへんし。


なんていう親や・・・。


俺はその罠に引っ掛かって、まんまと美沙に告白をするところやったんや・・・。


最悪やし・・・あんな罠にまんまと引っ掛かるなんて、アホすぎ。


俺は、リビングの前で頭を抱えていた。


ふぅ〜。


大きなため息をつき、わざと大きな声で「ただいま〜」と言いながら、リビングのドアを開けた。


中にいた二人は、何事もなかったようにテレビを観ていた。


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