【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「この人、演技上手いよね」
頬杖を付きながら、母さんが言っているのを見て、あんたもそこそこの演技派やで。とひそかに思うのであった。
「あら、准くん。おかえり」
そして、おばさんもなかなかの女優やね・・・。
美沙の母親に挨拶をすると、そのまま自分の部屋に逃げ込んだ。
むやみやたらにあの二人の前にいたら、いつ新たな罠をかけられるかがわからんし。
はぁ・・・。
机に向かうと、そのまま突っ伏した。
遠くの方で雷が鳴る音が聞こえていた。
ほんま、告白しないでよかった・・・。
母さんたちの思う壷やし。
俺って、アホすぎるよな。
俺のこの気持ちはどうしたらいいねん・・・。
俺が、受けたダメージは想像以上に大きくて、しばらく動けないでいた。
美沙、俺は、どうたらいい?
ははっ、そんなこと美沙に聞けるわけないし・・・。
もう黙っておくしかないんか・・・?
母さんたちに笑われるのを覚悟して告白するか?
解くことのできない難問に頭を悩ましていた。
「あーあかん。わけわからんし!」
両手で髪の毛を掻きむしり、ぬかるみから出ようとした。
その時、外がピカッと光り、その後に続いた雷鳴が、打開策を与えてくれた。
「これや!」
再び光る窓を背に、立ち上がると激しく鳴り続ける雷と同時に、右の拳を高らかに振り上げた。
そして両手を腰に当てて、高らかに笑うのだった。
「ふふふ、これは使える」
俺は、机に足を投げ出し、椅子に全体重をかけて笑みを零していた。