【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
『それが一番の目的やろ!?』
違うよ。
一番の目的は。
美沙が出て行った部屋で美沙への想いを膨らませていた。
「なぁ、母さん、小遣いの前借りしたいんやけど」
美沙たちが帰った後、早速作戦を開始した。
「何に使うん?」
予想通り、母さんは洗い物をする手を止めることもなく、冷たくあしらわれた。
しかし、俺にはには勝算があった。
「・・・美沙と遊びに行くんやけど、金欠で・・・」
恐る恐る言った言葉に即座に反応したのは、さっきまで興味もなさそうだった母さんだった。
「えっ、美沙ちゃんとデートするん?」
泡だらけの手を宙に浮かせて、驚きと喜びを混ぜたような表情で振り返った。
「デートというか・・・まぁそんなもんかな」
「どこに行くん?」
ニヤニヤしながら聞く母さんは、まるで芸能レポーターのようだった。
「どこでもいいやん」
わざと照れ臭そうに答えると、母親は満足げな表情で見つめていた。
「わかった。そういうことなら、特別にお小遣あげるわ」
「ほんまに?」
よっしゃ!
第一段階クリア!
やっぱりなぁ。美沙の名前出したらいけると思ったんよな。
部屋へ戻り、予想外の福沢諭吉を眺めて、にやけていた。
美沙とデートかぁ・・・
やばい・・・緊張してきた。
そういえば、美沙と遊びに行くなんて何年振りやろうか。
おれは、美沙との初めてのデートに浮足立っていた。