【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
「偽装恋人」
「は?」
「恋人を演じて、母さんたちを罠にはめる!」
「ほぉ」
少し興味が出て来たのか、健吾が姿勢を直して耳を傾け始めたので、得意げに話し始めた。
「それで、母さんを罠にはめるのと同時に、美沙も罠にはめる」
「美沙ちゃんを?」
「そう!偽装恋人から、本当の恋人になるようにするんや!」
「どうやって?」
「・・・・・・」
得意げに話していた俺の動きが止まったのを見て、
「准は、勉強以外は不器用なんやから、そんな高度なことはやめとけって!」
とあっさりと切られてしまった。
健吾の言葉にさっきまでの勢いは嘘のように、俯いてしまった。
やっぱり・・・俺って鈍臭いからあかんか?
鈍感やし・・・。
母さんにも、ぼーっとしてるって言われてたし。
「・・・・・・でも、もう美沙に言ってしまったし・・・それに、デートもする約束したし・・・」
「デート?」
俺の言葉が予想外だったのか、健吾は再び身を乗り出して聞き返していた。
「あぁ、土曜日に遊園地行くんや・・・」
沈没寸前の准に反して、健吾は笑顔になっていた。
「何を落ち込んでるねん!美沙ちゃんとデートできるんやったらいいやん!罠とか考えんと楽しんで来たら?」
そうか・・・。
俺は普通にしてたらいいんや。
だって、美沙が好きなんやから。
「健吾、ありがとう!やっぱり、持つものは親友やな!」
俺は、健吾の手をにぎりしめ、喜んでいた。
「じ、准、やめろ!気持ち悪い!」
「なんやねん!健吾!いいやんか!」
「ほんま、キモい!」
健吾に手を振りほどかれ、「周りを見ろ!」と言われ見てみると、みんなが俺らに冷たい視線を送っていた。