生ものですから本日中にお召し上がりください
「どうです? 肉は柔らかかったでしょう? いい肉だから柔らかいんですよ。とくに『女』は柔らかい」
「女?」
「捌くときに悲鳴が上がるんですがね、それが肉にいい影響を与え、柔らかくするんです」
「………」
「血もちゃんと処理して、ソースにするし、だからほら、コクとまろやかさが違ったでしょう」
「ちょ………」
「デザートをお持ちしました」
顔面蒼白な夫婦の前に召使いがクリーム色のシャーベットを置いた。
「………」
「ああ、デザートはフツウのシャーベットですよ。お口直しにどうぞ」
「ねえ、ちょ……この肉って………」
「肉? デザートはいらないんですか? 食べておいたほうがいいですよ。ダサレタ後でシャーベットの香りになるので、楽かと」
「それ、どういう………ダサレタ後って、何を」
「そんなもの」
腹をぽんぽんと叩いて見せた。
真っ青になる夫婦は自分の膝の上に置かれている皿と、ワゴンの上の鍋とを見比べている。