生ものですから本日中にお召し上がりください
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「ああ……………やっとお目覚めですか」
老夫婦は飛び起き、周りを確認した。
自分の体をべたべたと触り、そこに吐瀉物がないことを見て、顔を見合わせた。
不思議なんだろう。
カーテンを勢いよくあけて外を確認したが、そこには庭師によってきれいにされた庭があるだけだ。
俺の顔を化け物でも見るかのように見て、目を限界まで開いた。
「すみません、料理に時間がかかってしまって」
「………」
「妹がお酒をすすめたようで、ちょっと酔われてうとうとしていらっしゃったんですよ」
「うとうと?」
「ええ、ささ、料理ができましたので、こちらへ」
「いや、料理はもうけっこう。帰らせていてだきたい」
「そんなこと言わずに、せっかく作ったんですから」
「まさかと思っていたが、夢ならそれでいい。あの話は無かったことにしてもらう。専務には私から言っておくから、もうこの話は忘れてくれ」
「あなた、なんなことなんですか? 話というのは」
「お前はいい」
男の方はもう頑なに帰ると言い張り、女の方はそれに黙って従っている。