生ものですから本日中にお召し上がりください
玄関先では小夜子がソレの残りを解体し、喰らっているはずだ。
そこには鉢植えがたくさん置いてある。
その横には小夜子が作っている家庭菜園もある。
今日の食事の付け合わせの野菜もここからもいだものだ。
肥料もたっぷり。
この土の下には、小夜子が食い散らかしたモノの残骸が静かに眠っている。
水をやるように、血を滴らせるのが好きな小夜子は、必ずそこへ持っていって食い尽くす。
この夫婦は目覚めた時に、ちゃんと食事をしていればあんな光景を見ることはなかったのに。
ただの悪夢で終わらせられて、いつまでも帰ってこない娘をいつまでも待つことになったのに。
きっと帰るころには召使いが玄関をきれいに洗い流し、元通りにしていたはずだ。
残念だ。
俺の作った料理を、食事を断るからこんなことになる。
食事をしているところを見たいだけなのに。
そして、またここに戻ってきた。
「それじゃ、私が用意した食事、最後まで食べていきます?
残さずきれいに食べてあげないと、成仏できないって言うじゃないですか」
夫婦はまた腰を抜かし、泡を吹き始めた。
俺はそれを眺めて高笑いし、召使いに食事の支度を命じた。
「確かまだ取り分けて置いた腹の肉があるはず。すぐに作りますから、お酒でも飲みながら待っていてください」
まだ帰さない。
帰すわけにはいかないんですよ。
まだ終わっていないんだから。
【終】