生ものですから本日中にお召し上がりください

「何……今の」
「さ、どうぞお部屋へお戻りください」

召使いはお土産の箱を雑に取り上げると、案内しますと言い、夫婦を連れてさきほどの部屋へと誘導した。

「ねえ、すみません、やはり気になりまして。今のって、まさか人の声じゃ......」
「......この屋敷には私たち以外誰もおりません」
「じゃあ、なんだったの今のは。何かあったんですか?」
「......お気になさらずに。今食前酒をお持ちしますので」


質問に答えることなく召使いは慣れた様子でたんたんと言い、頭を下げた。


「あなた、なんか私ちょっと不気味だわ」
「そ、そうだな。確かに何かが変だとしか思えない」
「帰りましょうよ。あの召使いといい、さっきの声といい、なんだか怖いわ」
「......」
「今なら誰もいないし」
「あ、ああ」



二人は顔を見合せて頷くと、入ってきた扉の方へ近づき、そっと押し開ける。


召使いがあの変な声のした部屋へ入っていく後ろ姿が見えた。




「今のうちに出てしまおう」
「ええ」





震える手で帽子を被り、静かに扉を......

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