生ものですから本日中にお召し上がりください

「うまい!」
「おいしい」


夫婦は目を輝かせ、休むことなく血の滴るレアな肉にナイフをズブリと刺す。切る。ソースを絡めて口に運ぶ。



俺はそれを見ながらほくそ笑む。



「これはどこの肉なんです? 初めて食べるようなお肉で、おいしい。珍しいんでしょうね?」
「いえいえ、あなた方はよーくご存知だと思いますよ」
「……牛かしら? にしては柔らかくて味が濃いわ」
「おまえ何を言ってるんだい、これは牛なんかじゃないよ。これは………豚だろう?」
「これが豚なもんですか」
「牛のにおいと食感じゃないだろう」
「豚の臭みもないわ」



あははははははははは。



「いやいや、ちゃんとお教えしますから、そんなむきにならずに、食事を楽しんでください」




おかしくて笑いが出る。


どんどん食え。


最後の1滴まで舐めつくせ。





シャンパン片手にこの夫婦の食べっぷりを眺める。



これだけ美味しそうに食べてくれれば料理のしがいもあるってもんだ。




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